1日目 (月)忘れもしない十月六日の月曜日ことですが、その日の夜に上の奥歯が急に痛み出しました。
痛みはかなりのもので正直すぐに歯医者に行こうと思うほどでしたが、
幸い程なくして痛みが退いたので、とりあえず様子を見るという結論に達したわけです。
今考えるとこの判断が最悪だったことが分かるのですが
その時の自分は歯医者へ行くことの恐怖の前に正しい判断を下すことが難しい状態でした。
ちなみに痛み出した奥歯は以前からカルデラ状に大きな穴が開いていて
しばしば食べ物が詰まったりして難儀していたものです。
これを聞けば痛む前に歯医者にいけば良いだろうと思うでしょうが、
自分にとっては歯医者への恐怖はそれほど強いものだということです。
とりあえずその日はそれで終了で、痛みも退いて眠ることが出来ました。
2日目 (火)朝起きてから日があるうちは虫歯の痛みは全く感じません。
つまりすっかり痛みはなくなったという感じでいたのですが
もちろんそんなわけがないことくらいは理解しています。
虫歯を放置して直ることなどありえないのだから今は一山越えて休憩中という感じなのでしょう。
しかしいずれは痛み出すはずで、歯医者にいこうかどうか頭の中で悩み出したわけです。
それでも決断が出来なかったのは一生の不覚といっても良いでしょう。
ともかく日中は痛くないのだからこれですべてが終わってくれたらと念じつつ
夜になってベッドに入ったわけです。
それから十五分位してからでしょうか。
昨日の痛みが再びぶり返してきました。
どうも横になると痛みが出てくるようでしたが、あまりの痛さに眠ることも出来ず
その日は夜遅くまで部屋の中を行ったり来たりしつつ、
時には水で痛む歯のあたりをうがいしました。
どうやら歯を冷やすと多少は痛みが落ち着くことが分かりましたが
もちろん一時的な対処でしかありません。
それでも痛みを少しでも和らげるためにひたすら部屋とキッチンを往復したわけです。
そのうち明け方頃になってやっと痛みが治まってきたので眠ることが出来ました。
ただしさすがにこれではどうしようもないので
明日は歯医者の予約を取ることを決意した訳です。
三日目 (水)現実の痛みが歯医者の恐怖に勝ったので午前中に早速歯医者に予約の電話を入れました。
この時点では例によって痛みは消えており、電話をするのも逡巡しましたが
どうせ夜になれば痛みが出てくるのだから仕方ありません。
本当に久しぶりに(たしか10年以上は通っていなかったはずです)、
いつもの歯医者に電話をしたわけです。
しかしどうしたことか歯医者が廃業したようで、電話をしても病院の対応とは違うようでした。
詳しく話を聞くと以前の歯医者は半年くらい前に移転したらしく、
そのさい以前の患者が知らずに電話をかけてきたときのために
移転先の連絡先などを言付かっているという話でした。
いきなり機先を制された感じですが、移転先はかなり遠くになってしまったので
とても歯の治療のためには通えません。
しかしこの時は自分も相当動転していたらしく
その日は結局新しく近所の歯医者に予約を取ることもなく過ぎてしまいました。
時間は十分にあったのですが、なぜすぐに別の歯医者を予約しなかったのかと悔やまれます。
その日の夜は再び痛みに悩まされましたが、痛みはいつまでも退かず
結局うとうととしたのは外が完全に明るくなってからのことでした。
四日目 (木)昼間はいつものように痛みを感じないのですが
さすがに近所の歯医者に予約を入れようと電話をしました。
しかしなんということか、自分の家の近辺では木曜日は歯医者がどこも定休日のようでした。
完全に休みというわけではなくて予約患者のみの日という感じらしいのですが
あまりの事態に思わず苦笑したものです。
昼間は痛みが出てこないのでそうした余裕もあるのですが、
このとき感じたのは自分のめぐり合わせの悪さと、さらにもし明日予約をするとなれば
実際の治療は週明けになるのではないかという恐怖でした。
さらに悪いことには来週の月曜日は祭日となっており、
最悪来週の火曜日にならないと歯医者にいけないかもしれないという状態でした。
昼間こそ痛みは出ないもののすでに眠れない日が続いているせいで
頭のほうはかなりぼんやりとしてきています。
しかし自分の都合でこうなったのだから自業自得という感じでもあるし
仕方がないとあきらめるしかありません。
一応救急患者として無理やり入り込む手はあるようですが、
さすがに自分のわがままでそこまで他人の手を煩わすことは出来ません。
ともかくすべては明日にならないとどうにもならないので
後悔しつつ本日が終了したわけです。
夜になってからの痛みはかなりのものでとても横になどなっていられません。
とにかく体を起こしていると痛みが退くようなのですが、
痛みが退くまでに時間がかかるし、その間はうがいをしたりして我慢するしかありませんでした。
痛み止めとして正露丸をつめることなども調べましたが、
かえって痛みが増幅するという話も見かけたので
とても実行する勇気はもてませんした。
五日目 (金)結局一睡も出来ないまま朝を向かえましたが
歯医者が始まるまでの時間がどれだけ待ち遠しかったか。
ともかく営業時間が始まるとすぐに予約の電話をかけたわけです。
これほど歯医者に行きたくなったのは人生で初めてかもしれません。
ぼんやりした頭で電話をかけると、明日の夕方に予約が取れるということでした。
出来れば本日中に何とかしたかったのですが、
さすがにそれはわがままというものでしょう。
また明るくなってからはいつものように痛みも退いていたので
不満を感じつつも己の愚かさの結果だと受け入れたわけです。
ともかく歯医者に明日行くことが決定したので精神的には随分と楽になりました。
本日の夜を耐え切ればそれですべてが終わるというわけだから
昨日までのようにいつ果てるとも分からない痛みに耐えるだけではなくなったわけです。
やはり人間には明日への希望が必要だと実感したわけですが
ともかく今日の夜は我慢するしかありません。
ここしばらくぐっすりと寝た記憶がありませんが対処法もないのだから
夜中寝ずに立ったり座ったりうがいしたりして過ごしたわけです。
このときは早く外が明るくなってくれと願っていましたが
時間の流れを早く感じることも遅く感じることもなく淡々と過ぎたという感じでした。
六日目 (土)朝部屋が明るくなってきたときはこれでやっと苦しみが終わると安堵したものです。
ともかく日が昇ってから少しうとうとしましたが、
歯医者の予約が決まっているので随分と気が楽でした。
痛みのほうはすでに治まっていて、後は夕方を迎えるだけという感じでした。
予約時間の少し前にはきちんと歯磨きをして用意万端を整えて
いざ歯医者へ行ったわけです。
治療のほうは麻酔を打ってがりがり削って詰め物をして終了です。
麻酔が切れたときどうなるかやや不安でしたが、
昨日までの痛みは全くなくなって、その日の夜はしばらくぶりでぐっすり眠れました。
麻酔の注射も歯の痛みと比べればどうということのないレベルで、
これならなぜもっと早く歯医者に行かなかったのかと後悔したものです。
ともかく無駄に我慢をしたというのが今回の歯痛の顛末ですが
やはり歯が痛くなったら直ちに歯医者に行くのが正しい選択だと実感したわけです。
その後の様子現在は歯の治療の真っ最中で、そろそろかぶせ物をして終わりそうな感じです。
痛みは全くなくなっているので、もちろん夜も安心して眠れるわけです。
歯科治療に対するここまで強い拒否感はもちろん自分の過去の経験から来るものですが
いい加減それを乗り越えないとどうしようもないと感じています。
また治療中の痛みもたいしたことはないし
これからは定期的に歯医者に行くことを考えています。
虫歯は他にもあるし、それらもいずれは痛みだすでしょう。
それを未然に防げるのならぜひともそうするべきだと思っています。
少なくとも痛みを我慢するなど馬鹿げているし、
それで事態が好転することなどありえないことは肝に銘じておきたいと思います。
ところで今回はインターネットで色々歯のことを調べましたが
自分の症状はどうやら歯髄炎という状況のようでした。
それも眠れないほどなのだから、相当ひどいのではないでしょうか。
もっともそれが分かったところで自分では何も出来ないし
結局早く歯医者に行く以外の選択は最初からなかったわけです。
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